「ベトナム風お好み焼き」という名で紹介されるこの「バインセオ/Banh Xeo」。実はお好み焼きとは似ても似つかず、パリパリでクリスピー。米粉にココナッツミルクと水を加えて作った生地は、ターメリック入りで黄色いのが特徴です。
焼き方が面白く、油を熱した底の丸い中華鍋で少量の豚肉と海老を炒め、その中に生地を流し入れて手早く鍋を回 しながら薄く大きく広げます。そこにもやしや蒸した緑豆などをのせ、蓋をしてサッと蒸します。多めの油を注いで高温で調理するので、生地がパリッと揚げ焼 き状態になるのです。最後にこれを半分に折ると出来上がり。
食べ方は適当な大きさに切り、リーフレタスやからし菜にのせ、大葉やドクダミ、バジルなどの香草とともに巻 き、タレに付けて食べます。タレは魚醤ヌックマム(Nuoc Mam)とレモン汁(または酢)、砂糖を混ぜた甘酸っぱいもの。青パパイヤとにんじんの甘酢漬けを入れたり、添えたりして食べます。たっぷりの野菜やハー ブ、爽やかなタレと合わせることで、油で焼き揚げた生地もサッパリと食べられるのです。
このバインセオ、ホーチミン市や、日本のベトナム料理店などで食べられる大判タイプのものは、実はベトナム南 部風。地域が変わるとその土地に合わせて、姿や味が変化します。たとえばファンティエット(Phan Thiet)やムイネー(Mui Ne)では、ターメリックを使わない白いものがあり、小さめの手の平サイズで、漁師町らしくイカが入っていたりします。ホイアン(Hoi An)などの中部も手の平大。これを野菜やハーブだけでなく、ライスペーパーで包んで食べます。タレはこの地方の味噌を使った味噌ダレです。また、「バイ ンコアイ/Banh Khoai」と呼ばれる厚焼き生地のフエ風バインセオは、肉団子などがのり、半分に折らないオープン状のもの。タレは、「ヌックレオ/Nuoc Leo」と呼ばれる肉味噌ダレ。メコンデルタやヴンタウ(Vung Tau)などでは、ひと口サイズの「バインコット/Banh Khot」もあります。
ところで、ハノイのガイドさんから「『バインセオが食べたい』というお客さんが多くて…」と愚痴られたことが あります。もともとベトナム北部では、バインセオを食べる習慣がありません。最近は地方の食べ物も人気で、専門店もできてきましたが、ハノイでバインセオ を食べるのは、大阪でもんじゃ焼を食べたい、というようなことなのかも。それほど日本人にとって、バインセオは人気なのですね。
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